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欧米流人事賃金制度導入の歴史と「働き方改革」

2017年05月27日 11時40分34秒 | 労働
欧米流人事賃金制度導入の歴史と「働き方改革」
 働き方改革の2本柱は労働時間短縮と同一労働・同一賃金ということですが、同一労働・同一賃金に関係する賃金制度・体系についての日本の経験を振り返ってみましょう。

 この問題は、日本的な正社員制度の中の賃金と、欧米流の雇用制度の中の賃金制度の相克として論じられ、現実に導入されたりしてきた歴史を持っています。

 結論から先に言ってしまいますと、日本の中にも欧米流の人事賃金制度で運用されている部分がかなり広く存在します。それは「非正規従業員」の世界です。
 非正規従業員にも、パート・アルバイトから、契約社員、派遣社員、嘱託、顧問などいろいろありますが、こうした人たちの賃金は、全く欧米と同じで、基本はマーケットの相場です。評価制度もあって、いわゆる Job&performance の原則で決まります。

 つまり、非正規従業員の賃金は、もともと同一労働・同一賃金の原則で出来上がっていて、欧米と同じなのです。
 ですから、欧米流の同一労働・同一賃金を貫徹させるためには、従業員をずべて非正規従業員にすれば、即座に完成です。

 今の日本流の正社員制度の中で同一労働・同一賃金を貫徹することは不可能です。正社員同士でもそうですし、まして正規と非正規の間では「理論的に」成り立たないのです。

 欧米流の賃金制度導入の動きは戦後からありました。「職務給」の導入論は終戦直後から存在し、当時の労働問題専管団体の日経連は、その主唱者でした。
 真面目な日本企業は、職務給導入を真剣に検討したようです。しかし最終的には、賃金体系の一部に職務関連部分を設け、職務給を(部分的に)導入することで済ませ、最終的には職能資格給が一般的になりました。

 もう1つは、数年前までの円高不況の中で、「成果給」を導入しようという動きでした。成果給は賃金制度の発展の中で「出来高給」として存在したものですが、個人間の競争心をあおり、協調を壊すということで、欧米でも賃金の一部に導入(評価制度)が一般的です。
 日本でも、近年の話ですからご記憶の方も多いかと思いますが、一時盛り上がりすぐに消えました。企業の業績が毎年下がる時に「成果給」と言えば、賃金は下がるばかり、などと揶揄されました。

 欧米にない新卒一括採用という優れた雇用方式(若年層失業率が著しく低い日本です)で、「職務にあった技能を採用」するのではなく、「企業に合った人間を採用する」日本の雇用システムの中では、若い従業員は「1年先輩より低い賃金で当然」と考えているわけで、「同一労働・同一賃金」は貫徹しなくて当然なのです。
 基底には、「その人間の生涯の貢献に見合った処遇(含賃金)」という、従業員を人間として採用する(能力・技能は企業が仕込む)という日本独特の「企業と従業員の関係」があるのです。

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